COLUMN不動産売却コラム

家族信託とは?わかりやすく仕組みやメリット・手続きを解説

2024.06.27

こんにちは!不動産売買をサポートする八城地建の酒井です。

 

相続予定の不動産の売却や処分をスムーズに進められる方法を探している方は、多いのではないでしょうか。

 

平均寿命の延びと共に、認知症や病気などによって判断能力が低下してしまい、保有している不動産の管理や処分が滞ってしまうケースが増加しています。

 

そこで今回は、家族による財産管理手法の一つである「家族信託」について、わかりやすく解説します。

 

元気なうちに制度を利用して財産の管理を家族に任せることで、相続後の不安も軽減できる制度ですので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

家族信託

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家族信託とは?仕組みからわかりやすく解説

家族信託とは、平成18年(2006年)の信託法改正によって定められ、翌19年に施行された制度です。

 

施行されてすぐは、利用者がそれほど多くありませんでしたが、近年認知症によるリスクを軽減できる財産管理方法として注目を集めています。

 

ここからは家族信託がどういうものか、またその仕組みはどうなっているのかという点についてお話しします。

 

家族信託とは?

家族信託は、お伝えしたように財産管理の手法の一つです。

財産を持つ方が、信頼できる家族に財産の管理・運用・処分などを任せられる仕組みです。

 

信託銀行のような組織ではなく、家族に任せるため、高額な報酬や手数料は発生しません。

そのため、大きな財産を持つ方だけでなく、誰でも気軽に利用できる点が大きな特徴となっています。

 

家族信託は、平均寿命が延びる中、認知症の発症が増加していることを背景に利用されるようになりました。

 

認知症が悪化して判断能力が低下すると、子どもや家族であってもその財産に手をつけられません。

 

家族信託を利用すれば、介護や生活に必要なお金を降ろしたり、不動産を売却・処分したりすることが、家族の判断でできるようになります。

 

家族信託の仕組み

家族信託は「委託者」「受託者」「受益者」の3者が、それぞれの役割を果たすことで機能します。

 

それぞれの役割は次の通りです。

  • 委託者:財産の所有者で、財産を信託する
  • 受託者:財産の管理・運用・処分を任せられる
  • 受益者:財産権の所有者で、財産から発生する利益を得る

 

一般的には、委託者と受益者は同じ人になります。

 

家族信託は、親が持つ財産の管理・運用を子どもに任せ、出た利益や収益は親が受け取るという使い方が多いからです。

 

こうすることで、委託者が認知症などで判断が難しくなった場合にも、財産を凍結させず、家族が引き継いで管理することができます。

 

委託者が受託者に託す財産「信託財産 」には、金銭だけでなく、株式のような有価証券や不動産、知的財産権※などが含まれます。

 

※知的財産権=特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権、半導体回路配置利用権など、、知的創造活動によって生み出されたものを守る権利

 

 

家族信託をしたほうが良いケース・メリットとは?

家族信託

財産を持つ方に代わって、その管理を他の人に任せられる制度としては「成年後見制度」もありますが、家族信託は成年後見制度よりもメリットの多い制度です。

 

ここからは、家族信託のメリットとあわせて、家族信託を選ぶほうが良いケースについてお話しします。

 

家族信託のメリットとは?

家族信託の制度を利用するメリットには、次のようなものがあります。

  • 自由度の高い柔軟な財産管理
  • 遺言書に代わる資産継承
  • 不動産の共有相続トラブルの予防

 

それぞれについて、もう少し詳しく触れていきます。

 

自由度の高い柔軟な財産管理

自分での意思決定や判断能力に不安がある場合、成年後見制度が利用できます。

ただし、利用には申し立てや調査、審判など手続き上の負担が大きいことに加え、家庭裁判所へ毎年の報告義務があります。

 

また、管理している財産の運用や活用を行えないなど、負担や制約が多い制度です。

 

一方で家族信託は、元気なうちに財産の管理・運用を受託者に任せられるため、財産を持つ方の意向に沿った財産管理を指示できます。

 

判断能力に不安が出たときには、受託者の責任と判断において、積極的な財産の活用や運用、処分まで含めて実行できることがメリットです。

 

遺言書に代わる資産継承

家族信託のもう一つのメリットは、遺言書に代わる資産継承が可能である点です。

 

相続を考えて遺言書を作成する際には、民法によって定められた厳格な方式を取ることが必要です。

家族信託であれば、契約は委託者と受託者との間で行われるため、手続きの手間が少なくて済みます。

 

加えて、遺言書では不可能な二次相続以降の資産継承先の指定ができることも、家族信託の大きなメリットといえるでしょう。

 

基本的に相続は配偶者→子どもの順番に行われますが、例えば相続人である子どもが結婚していなかったり孫がいなかったりするケースもあります。

そういった場合、先祖代々の不動産の継承者が途切れてしまうことを避けるために家族信託が利用できます。

 

遺言書で指定できるのは自分の後に相続する人までですが、家族信託であれば、その後の相続人を相続順位以外の人からでも指定可能です。

 

不動産の共同相続でのトラブル予防

相続する財産の中に不動産があった場合、兄弟で共同相続するようなケースがあります。

 

共有不動産は、共有者全員の同意がなければ処分できません。

そのため、一人でも認知症などによって判断能力が低下してしまった場合は、不動産の売却や処分が滞ってしまいます。

 

家族信託の制度を利用すれば、共同相続人としての権利や財産的な価値は平等にしたまま、管理・処分の権限を共有者一人に集約できます。

 

 

家族信託をしたほうが良いケースとは?

ここからは、家族信託をしたほうが良いケースについて具体例で見ていきましょう。

 

家族信託制度の利用をおすすめしたいのは、次のようなケースです。

  • 不動産の取扱いに明確な将来設計があるケース
  • 財産権を持つ方の健康に不安があるケース
  • 不動産の相続人が複数いるケース
  • 相続人である子どもに不安があるケース

 

不動産の取扱いに明確な将来設計があるケース

不動産の購入や建設、売却などに関して明確な将来設計がある場合は、長期にわたって資産の継承対策ができる家族信託を利用するのが良いでしょう。

元気なうちに管理や運用を受託者に指示・継承することで、判断能力が低下した場合でも、当初の計画に沿った財産管理が可能となります。

 

財産権を持つ方の健康に不安があるケース

財産を持つ方が高齢になったり、将来的に判断能力の低下が懸念される可能性がある場合にも、家族信託を検討するのが良いでしょう。

家族信託をしておけば、自身の介護に必要な費用を捻出したり、実際に介護のために入院が必要となったときなどに、家族の判断で自身の資産を管理してもらえたり自宅を処分したりできるからです。

 

不動産の相続人が複数いるケース

共有不動産の処分には、共有者全員の同意が必要です。

複数の相続人がいる場合、共有者全員の同意が得られないというトラブルが発生するケースがあります。

 

また、共有者の中で一人でも意思能力・判断能力が低下してしまうと、全員の同意が得られず、処分が進まないという事態にもなりかねません。

家族信託で管理や処分を共有者の一人に集約すれば、将来的なトラブルを避けられます。

 

相続人である子どもに不安があるケース

例えば、相続人である子どもに障害や健康上の不安があるケースなども、家族信託を検討した方が良い事例です。

 

元気なうちに信頼できる親族や兄弟を受託者にし、財産の管理や運用方法を指示することで、親が亡くなった後、信託した財産の中から不安のある子どもを守る仕組みを作れる可能性があります。

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家族信託をするデメリットもある?

家族信託はメリットが多い制度ですが、デメリットについても知っておく必要があるでしょう。

 

家族信託制度のデメリットには、次のようなものがあります。

  • 節税効果はない
  • 身上監護はできない
  • 受託者の責任が重い

 

節税効果はない

相続に関する制度には、節税対策につながるものもありますが、家族信託に関してはその効果は生じません。

あくまでも財産管理の一つの手法と考えるのが良いでしょう。

 

相続に関する税負担については「不動産を生前贈与するメリットや注意点、かかる税金もチェック!」でも解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

身上監護はできない

身上監護とは、意思決定や判断能力が低下した方の生活を維持するための、仕事や療養看護に関する契約のことを指します。

 

成年後見制度は、主にこの身上監護を目的に作られていて、一人で決めることに不安がある方を法的に保護する制度です。

一方で家族信託は財産管理・運用・処分を主な目的としているため、身上監護はできません。

 

成年後見制度については「成年後見人が不動産売却を行う方法とは?手続きの流れも徹底解説」でも詳しく解説していますので、チェックしてみてくださいね。

 

受託者の責任が重い

家族信託では、受託者の責任が重いこともデメリットといえるかもしれません。

 

例えば、建物の信託を任された場合、その建物に対する管理責任は受託者にあります。

加えて固定資産税の支払い義務も受託者にあるため、税負担が増す可能性も考えられるでしょう。

 

 

家族信託を行う方法や注意点もチェック

相談する夫婦

ここからは、家族信託を検討している方に向けて、実際に家族信託を行う場合の手続きの流れや注意点についてお話しします。

 

家族信託手続きの流れ

まずは、家族信託手続きの流れについて確認していきましょう。

実行するときは、次のような流れで手続きを進めます。

  1. 信託契約を締結する
  2. 信託用の口座を開設する
  3. 信託登記を行う

 

信託契約を締結するには、委託者と受託者の間で契約書を取り交わすことが必要です。

契約書に記載する内容は自由ですが、主に次のような内容を取り決めて記載します。

  • 信託の目的
  • 財産の範囲
  • 財産の管理方法や処分権限の範囲
  • 受託者・受益者の決定
  • 信託の終了事由

 

信託契約を締結したら、信託用の口座を開設します。

 

受託者は、自分の財産と信託財産を区別して管理する義務があります。

金融機関によっては家族信託専用の口座開設が可能なところもあるので、確認しておくと良いでしょう。

 

信託財産に不動産があった場合は、信託財産であることを示すために名義変更の登記を行います。

この手続きが完了したら、信託財産の管理・運用を開始可能です。

 

家族信託の注意点

家族信託を開始する際には、いくつかの注意点があります。

 

一つは、目的によっては家族信託だけでなく、他の制度も併用することです。

認知症対策を目的とした場合、デメリットでもお伝えしたように家族信託では身上監護ができないため、成年後見制度もセットで準備するのが良いでしょう。

 

また、家族信託で契約していない財産がある場合は、遺言書も併用して準備をすれば相続の不安が軽減されます。

 

もう一つの注意点は、家族・親族など相続に関係ある人の間で家族信託についてしっかり理解すると同時に、同意を取っておくということです。

 

家族信託では財産の名義人が受託者に移行します。

そのため、相続に関係しながら、理解・同意を得られない家族や親族がいた場合、将来的なトラブルに発展する可能性があるのです。

 

家族信託を利用する場合にどのような制度を併用したら良いか、家族や親族間の話し合いをどのようにするべきかなど、不安な点があったら専門家に相談するのがおすすめです。

自分でも手続きは行えますが、弁護士や司法書士へ手続きを依頼するケースが多いです。

 

将来的なトラブルを軽減し、安心して財産を任せられるベストな方法を考えてくれるでしょう。

 

 

家族信託とは家族のための家族による財産管理

家族信託とは、財産管理のための手法の一つです。

財産を持つ委託者が、子どもやその他の家族などを受託者としてその財産を託し、管理や運用、処分を任せる仕組みのことをいいます。

 

管理だけでなく、運用や処分も受託者の責任と判断で実行できるのが大きな特徴です。

認知症対策や二次相続以降の資産継承、不動産の共有トラブル予防などを目的として利用できることから、注目を集めています。

 

不動産に関しては、将来的に委託者の判断能力が低下したときに、受託者の責任と判断で売却や処分を意思決定できる点が大きなメリットといえるでしょう。

 

家族信託制度の利用に関して、不安がある場合は専門家に相談するのがおすすめです。

 

札幌市南区、北広島市、恵庭市で信託不動産や相続不動産の売却を検討されている方は、八城地建までお気軽にご相談ください!

ご相談は無料で承っています。

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