古家付き土地を売却する際の注意点は?法改正による影響も解説!
2025.05.15
こんにちは!不動産売買をサポートする八城地建の宮下です。
相続した実家や築年数が経過した家を売却する際、「古家付き土地」として売るという選択肢があります。
しかし、古家付き土地の売却には特有の注意点があり、準備不足が影響してトラブルに発展することも。
今回は、古家付き土地の売却時に押さえておくべきポイントを、4号特例の法改正を含めて丁寧に解説します。
建物を残したまま売るか、更地にすべきかの判断基準、売却の価格目安や費用の種類もお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
古家付き土地の売却時の注意点は?4号特例の縮小の影響も重要!
古家付き土地の売却では、建物がある分、通常の土地売却とは異なる注意点があります。
特に、「4号特例の縮小」により、再建築に関する確認や説明がこれまで以上に重要になってきました。
「4号特例の縮小」とは
4号特例とは、木造2階建て以下などの小規模な住宅について、建築確認申請の一部審査が省略される制度です。
2025年(令和7年)4月にこの制度が見直され、対象の範囲や審査内容が大きく変わり、特例の対象が縮小されました。
【改正前の4号特例】
- 木造2階建て以下・延床面積500㎡以下の住宅などは、「4号建築物」として、建築確認申請時に構造や防火に関する審査が一部省略されていた
- 申請が簡略で済み、多くの戸建てがこの特例のもとで建築された
【2025年4月以降・改正後の4号特例】
- 木造2階建ての住宅などは、新たに「新2号建築物」として分類され、原則として構造・防火の詳細審査が必要になった
- 省略対象となるのは、延床200㎡以下の木造平屋建てなど、より小規模な建築物に限定される
これまでは、買主の多くが「古家を解体すれば、基本的に建て替えはできるだろう」と考えており、古家付き土地であっても購入のハードルはそれほど高くありませんでした。
しかし、制度改正により建築確認の審査が厳しくなったことで、「本当に建て替えられる土地なのか?」と慎重になる買主が増えてくるでしょう。
そのため、売主としては、「建て替えに問題がない物件である」と判断してもらえるよう、書類や法的条件の確認・説明がこれまで以上に重要になります。
4号特例縮小によって、売主が注意すべき点は?
売主としては以下のような点を事前に確認し、再建築に関する不安をできるだけ解消しておくことが大切です。
- 建築確認済証や検査済証などの書類が残っているかを確認する
- 書類がない場合は、市区町村の窓口や建築士を通じて再建築の可否を調査しておく
- 不動産会社とも連携し、説明責任を果たせる状態にしておく
また、2025年4月の制度改正以降、買主側が建て替え可否に対してより慎重になっていることから、「建物状態や再建築条件に関する不安」に備え、契約書に特約を設けるケースが急増しています。
例えば、「建物は現状有姿で引き渡し、売主は責任を負わない」といった内容を明記することで、不要なトラブルを未然に防ぐ実務対応が広がっています。
こうした特約は、単に建物の老朽化対策にとどまらず、「再建築条件の変化に対する買主側の不安」への対応としても有効です。
不動産会社と連携し、売却前に契約内容の見直しを行うことが、法改正後のスムーズな取引につながるでしょう。
古家付き土地でさらに注意すべき3つのポイント
建築のルール変更によって、再建築できるかどうかの説明がこれまで以上に大切になりました。でもそれだけではありません。
実際に売却する際には、建物や土地の状態・契約前の準備などでもトラブルにつながることがあるため、事前にしっかり確認しておくことが大切です。
古家付き土地を売るときに、さらに注意したい3つのポイントもご紹介します。
①老朽化した建物のリスクを想定し、トラブル回避の特約を設けておく
古家は老朽化により、雨漏りやシロアリ被害など目に見えにくい不具合が起きやすく、買主にとって不安の原因となります。
こうした物理的リスクへの備えとして、「現状有姿での引き渡し」など責任を限定する特約を設けることが有効です。
近年は、建築制度上の懸念(4号特例の縮小)とあわせて、制度・建物双方のリスクを考慮した契約条件を整えるケースが増えており、不動産会社と連携して事前の対応を進めることも重要です。
②土地の境界が曖昧なままでは売却が難航するおそれもある
土地の境界が曖昧なままだと、買主が不安を感じ、契約に支障をきたすことがあります。
売主には「境界明示義務」があるため、確定測量図がない場合は、事前に測量士などによる調査を行い、境界を明確にしておくことが望ましいです。
特に、面積や接道条件が価格や再建築の判断に関わる場合は、早めに準備しておくことで価格交渉の回避にもつながります。
③残置物の処分は売り主の責任となる
古家付きの物件には、家具や家電、ゴミなどがそのまま残っているケースも。
生活ゴミは「一般廃棄物」に該当し、解体業者では処分できないため、売主が事前に対応しておく必要があります。
処分がされていないままだと、買主にとって負担となり、値下げ交渉や契約トラブルの原因になることもあるため注意が必要です。
古家付き土地のまま売却するメリットと更地にしたほうが良いケース
古家付き土地を売却する際は「建物を残すか」「解体して更地にするか」の判断が必要です。
それぞれにメリット・デメリットがあり、売却方針を決めるうえで重要なポイントになります。
特に最近では、4号特例の縮小により再建築の確認が厳しくなったことで、買主が建て替えの可否に不安を感じるケースも増えており、より慎重な判断が求められます。
古家付きのまま売却するメリット
古家を残したまま売却する場合、以下のようなメリットがあります。
- 解体費用がかからない
- 固定資産税の軽減措置が継続される
- 古民家再生を目的とする買主に需要がある
古家付きのまま売却する最も大きな利点は、解体費用が不要になることです。
解体には、坪単価5万円前後かかることが一般的です。
30坪ほどの住宅の場合、150万円以上かかる計算となりますから、大きなコスト削減につながります。
また、古家があることで、土地に対する固定資産税の住宅用地特例により、200㎡以下の部分については固定資産税が6分の1に減税されます。
売却までの間、税負担を軽減できるのも、古家を残すメリットの一つです。
加えて、リノベーション前提で古民家を探している層も一定数おり、解体せずに売り出すことで、意外な付加価値が評価されるケースもあるでしょう。
更地にして売却したほうが良いケース
建物を解体してから売却したほうが良いと考えられるのは、以下のようなケースです。
- 早く売却したい
- できるだけ高く売りたい
- 購入希望者の幅を広げたい
- 古家が老朽化していて評価が難しい
スピード重視で売却したい場合、更地のほうが検討されやすく有利です。
新築を希望する買主にとっては、着工しやすく、住宅ローンも組みやすいため、早期売却が期待できます。
また、価格を高く保ちたい場合にも、更地にしておくと「解体費用を見越して値引き交渉される」リスクを避けられます。
建物の老朽化が激しい・特殊な構造で評価が難しいといった場合には、残しておくことで逆に売却の障害になる可能性もあるため、状態によっては、早めに解体したほうが合理的です。
なお、古家付き土地と更地渡しの違いや判断ポイントについては、「古家付き土地・更地渡し、それぞれのメリット・デメリットとは?」でも詳しく解説しています。
古家付き土地の売却価格の目安や、かかる費用も確認!
最後に、古家付き土地の売却価格の目安や、かかる費用も確認しておきましょう。
3つのタイプ別!古家付き土地の売却価格の目安
古家付き土地は、その建物の価値や活用想定に応じて、概ね以下の3パターンに分類できます。
それぞれのケースによって、買主の評価や売却価格の水準は大きく異なります。
①建物に価値がある場合
建物が十分に使用できる状態で、買主がそのまま居住または賃貸として活用できるケースです。
中古住宅としての需要が見込めるため、「土地+建物の合算価格」で売れる可能性も。
築浅で管理状態が良ければ、特に評価されやすくなります。
②建物が老朽化し、解体が前提の場合
建物自体には価値がないか、むしろ解体コストがかかるため、実質的には「古家付き=更地前提」として評価されます。
この場合、「土地の価格から解体費用分を差し引いた金額」が売却価格の目安となります。
③不動産会社などに「開発素地」として売却する場合
敷地が広く、複数区画に分筆できるような土地であれば、不動産会社が分譲や開発を目的に一括で購入するケースもあります。
この場合、売却価格は「想定される分譲価格から、造成費やインフラ整備費、開発利益などを差し引いた金額」をもとに、不動産会社が逆算して算出することが一般的です。
そのため、一般的な宅地相場よりも、やや低めに査定される傾向があります。
金額だけでなく、査定の前提条件や根拠もあわせて確認し、複数社に査定を依頼することが大切です。
売却にかかる費用の主な項目
古家付き土地を売却する際には、以下のような費用が発生します。
- 仲介手数料
- 測量費用(測量が必要な場合)
- 登記関連の費用(住所・氏名変更、抵当権抹消など登記が必要な場合)
- 印紙税(売買契約書に貼付する)
- 譲渡所得税(売却の利益「譲渡所得」が出た場合)
それぞれの金額は条件によって異なりますが、あらかじめ想定しておくことで、売却後のトラブルや資金計画のズレを防ぐことができます。
具体的な費用目安は、「家の売却時に発生する諸費用とは?できるだけ安く抑える方法も」でご紹介していますので、あわせてご確認ください。
古家付き土地売却で失敗しないために!注意点を押さえて準備を
古家付き土地の売却には、建物や土地の状態、法制度への対応など、通常の不動産売却とは異なる注意点があります。
特に、2025年4月からの4号特例の縮小によって、建て替えに関する確認や説明がより重要になっており、契約書での特約設定も含めた慎重な準備が求められます。
さらに、境界の不明確さや残置物の放置といった物理的なトラブルにも備えておくことが大切です。
古家を残したまま売るか、更地にして売るかは、再建築条件や解体費用、固定資産税の特例、売却時期などを総合的に見て判断しましょう。
あらかじめ売却価格の目安や必要経費を把握しておくことで、スムーズな売却につながります。
不安な点がある場合は、不動産会社などの専門家に相談しながら、トラブルのない安心できる売却を目指しましょう。
札幌市南区、北広島市、恵庭市で不動産の売却を検討している方は八城地建まで、お気軽にご相談ください。
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